目次
はじめに|住宅・不動産業界では、予測と現実の“ギャップ”がさらに大きい?
前回のコラムでは、生成AIや音声SNS、ウェルビーイングなど、2025年の社会全体におけるトレンド予測と実際の動向をもとに、“話題と現場のズレ”や“静かに進んだ変化”に注目しました。
“面白そう”と感じられる技術やサービスに飛びつく動きは一定数見られましたが、実際には思ったほど定着していないものも多く、華やかな予測と現場の現実との間には、大きなギャップが存在していることがわかりました。
前回のコラムはコチラ ▶ https://freedom-x.co.jp/news/news-18653
今回は視点を住宅・不動産業界に絞り、2025年上半期終了時点での予測トレンドの現在を深掘りしていきます。
そもそも住宅・不動産業界は、他業界と比べて新しいシステムの導入やDX化などの“変化”が行われにくいと言われています。
実際、下図の総務省が2021年(令和3年)に実施した調査の結果※1によると、
2021年の時点では、建設業の企業の79.4%、不動産業の企業の76.8%が、DX化に“否定的である”と回答していることがわかります。これは、その他を除く23業種中8番目に多い結果です。
こうした背景を踏まえ、本コラムでは、その“変化”についてトレンド予測をもとにたどり、今の延長線上にある“次の一歩”を考えていきます。
1.住宅・不動産業界で「これが来る」と言われていた2025年
2025年のはじめ、住宅や暮らしに関するトレンドとして、さまざまな話題が業界内で取り上げられていました。
その中で、このようなテーマを耳にした方も多いのではないでしょうか。
- ・メタバース展示場で“どこでも内見”
- ・AI営業による接客の自動化
- ・趣味全開!推し活ルームの拡大
- ・郊外型のミニマムハウス など
いずれも「時代に合っていそう」「確かに来るかも」と思わせる、話題性のあるものばかりです。
特にここ数年、生活や働き方の多様化が進むなかで、「暮らしをもっと自由に」「自分らしい住まい方をしたい」といった価値観の広がりが、これらのトレンドが注目された背景にはあります。
加えて、AIやメタバースといったテクノロジーの進化が住宅業界にも波及し始め、従来とは違う接客・提案のスタイルに注目が集まる流れが強まりました。
こうした社会的な期待や変化に応える形で、トレンドとしての広がりを見せていったのです。
とはいえ、実際の現場で「確かに最近よく見る」「定着してきた」と実感できるような変化が、どれほどあったでしょうか。
2.確かに話題にはなったけど、“業界全体の変化”までは至らなかったものも…
では、それらのトレンドがどのように受け止められ、本当に現実になったのか——
ここからは、その実態を見ていきます。
広がりを見せたテーマもあれば、期待ほどには浸透していないものもあり、話題と現場の“温度差”が見えてきます。
第1位:メタバース展示場で“どこでも内見”
話題性は高く、バーチャル空間上にモデルハウスを再現する取り組みも登場しました。
しかし実際の接客や検討プロセスでは、依然としてリアル見学や対面での打ち合わせが重視されています。
第2位:AI営業による接客の自動化
チャットボットや生成AIを活用した案内ツールの導入事例は増えており、特に初期対応や問い合わせ対応といったフロント業務では、実用性の高い手段として一定の定着が見られます。
ただし、商談や契約といった重要な局面では、あくまで補助的な活用にとどまっており、業界全体の主流として広がっているとは言い難い状況です。
第3位:趣味全開!推し活ルームの拡大
特定層に刺さるユニークなプランとして話題を呼び、SNSでも拡散されました。
SNSやイベントを起点としたマーケティング施策としては一部で定着傾向がありますが、標準仕様としての採用や広範な普及には至っておらず、現時点では話題先行の印象が強い状況です。
第4位:郊外型のミニマムハウス
「必要最小限の暮らし」やコスト削減の観点から注目されましたが、立地・法規・生活利便性との兼ね合いから、継続的な需要の広がりにはつながっていません。
このように、話題になったトレンドには一定の動きが見られるものもありましたが、いずれも“業界全体の主流”には至っていないというのが現状です。
前回のコラムで取り上げた社会全体のトレンドと比べても、住宅・不動産業界内のトレンドは、実際の現場への広がりという点では、“より限定的である”と言えるでしょう。
3.なぜ広がらなかったのか? 背景にある業界特有の事情
前回のコラムでも触れたように、世の中では新しい技術や価値観が話題になることは多くても、実際に定着するまでには一定の時間を要します。話題と現実とのギャップは、社会全体に共通する構造なのです。
そして前述のとおり、住宅・不動産業界では特に変化への対応に時間がかかりやすいという特性があります。
これは単にDX導入が遅れているという数値的な問題だけではなく、判断構造や合意形成の難しさに起因する部分も大きいのです。
たとえば、新しい支援ツールが登場しても、
- ・逆に顧客に伝わりにくくならないか
- ・既存の設計フローを崩さないか
- ・長期的に使い続けられるか
- ・導入コストや手間を考えたら今のままでいいのではないか
といった声が上がることは少なくありません。
商材の単価が高く、生活に直結する商品を扱っている業界特性もあり、「失敗できない」「安易に変えられない」という意識が根強いのです。
こうした構造的な慎重さは、導入を遅らせる要因にはなっても、変化そのものを否定しているわけではありません。
しかし実際には、変化に向けた“第一歩”にすら踏み出せない現場も少なくないです。
4.現場では“変化に着手できない”という実情も
ここで見過ごせないのが、“変化に着手するための体制そのもの”が整っていないという現実です。
人手不足、煩雑な業務、突発対応——企業の多くが現場の疲弊を抱えており、「変えたくても変えられない」状況が常態化しています。
2025年の業界調査※2では、
多くの企業が非効率な業務やリソース不足に課題を感じながらも、改革に踏み出せていない理由として「現場の体制が整っていない」「目の前の業務で手一杯」といった声が数多く挙げられています。
つまり、多くの現場では“変化の必要性”を認識していながらも、実行に移せない──そのギャップが慢性化しているのです。
一見、合理的に見える「様子見」という判断も、業界全体の体質として根づいてしまえば、“無意識の遅れ”となって積み重なっていきます。
気づいたときには、すでに打ち手を失っていた——そのリスクこそ、経営層が最も警戒すべき事態なのではないでしょうか。
現場が疲弊している状況において、「待てば改善する」「時間ができたらやる」といった姿勢では、何も変わりません。
重要なのは、今の制約下でも実行可能な形にまで課題を分解し、小さく始めることです。その第一歩こそが、変化への突破口になります。
では、それを誰が動かすのか——その役割は現場ではなく、経営層にあります。
実際、IT整備士協会の調査※3では、経営層がDXに対して理解と関与を示す企業は、プロジェクトの成功率が約3倍に高まるという結果が示されています。
すなわち、現場任せではなく、経営層が自ら責任を持ってコミットすることが、いま企業にとって不可欠な条件です。
5.“予測”は仮説 “仕組み”は成果を生む確かな行動
トレンドは、当たるかもしれないし、外れるかもしれません。未来予測はあくまで仮説であり、流行するとは限りません。
一方、今ある課題に対応する“仕組みづくり”は、着手すれば確実に現場を動かし、成果につながります。
- ・誰が対応しても一定の品質になるような、提案ナレッジの共有
- ・情報の分断を防ぐ、設計・工務との連携ルールの整備
- ・商談スピードを上げる、提案フローの見直し
- ・確認漏れや判断のゆらぎを防ぐ、チェック体制の構築
こうした改善の積み重ねこそが、変化の土台をつくり、組織の成長を支えていきます。
“いま目の前にある課題”に正面から向き合い、確実に解決できる仕組みをつくること。
そこにこそ、“次の一歩につながる可能性”があるのではないでしょうか。
6.まとめ|「何に困っているか」から考えてみませんか?
前回と今回を通じて見てきた2025年トレンド予測は、たしかに興味深いものでした。
「これから来そう」「面白そう」と感じる話題は多くありましたが、実際の現場にどれほど関係し、どこまで広がったかというと、上半期終了時点ではまだ限定的だったというのが実態です。
慎重な判断や日々の多忙さが影響し、住宅・不動産業界における変化の浸透には時間がかかる——その構造的な背景を知った今、私たちにできることは、「未来を当てる」ことではなく、「今、目の前の課題にどう向き合うか」を考えることです。
たとえば、同じようなミスが何度も起きていたり、重要だとわかっていることなのに手をつけられていなかったり。
うまくいっていないと感じながらも、日々の業務に追われて見て見ぬふりをしてしまっていたり。
そうした“現場の違和感”に目を向け、ひとつずつ変えていく。それが、未来を形づくる一番の近道なのかもしれません。
トレンドを追うよりも、「いま困っていること」に真正面から向き合うこと。
そこから生まれる改善が、次の変化を引き寄せる第一歩になるはずです。
<出典元>
- ※1:総務省(2021)「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」
- ※2:アットホーム株式会社(2025)「不動産業におけるDX推進実態調査」
- ※3:IT整備士協会(2025)「DX推進チームが知っておくべき失敗しない体制づくり」
【FREEDOM X株式会社について】
私たちFREEDOM X株式会社は、「教育よりも早く、採用より確実に。知的生産性に、革命を。」 を経営理念に掲げ、建築・不動産領域の知的生産性向上に挑んでいます。優秀な人材の育成がどの企業にとっても大きな課題である一方、その育成には不確実性や時間、コストがかかるのが現状です。 私たちはこの課題意識から、テクノロジーの力で人材の能力を底上げできないかと考え、住宅業界に特化したSaaSツールを開発・提供しています。 経験の浅い方でも無駄なく最短で成果を出せる未来を創造し、貴社が顧客の課題と向き合う時間を生み出し、コンサルティングの質を高めていくことを支援します。
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