2025.10.30 COLUMN

補助金で家を選ぶ時代のリアル| スマートハウス導入に見る生活者の“行動基準”の変化

はじめに|「お得だから買う」から「納得して選ぶ」へ

現在、太陽光発電や蓄電池といったスマートハウス設備を検討する人が増えています。

自宅で電気をつくり、ためて、使う――

そんな暮らしに憧れる一方で、初期費用の高さを理由に迷う人も少なくありません。


そこで多くの人が頼りにするのが、国や自治体による「スマートハウス補助金」です。


ただし、最近の住宅検討者は“補助金ありき”ではなく、“制度を賢く使いこなす前提”で行動しています。


この記事では、エンドユーザーがどのように情報を集め、何を基準に判断しているのかを分析しながら、企業がこの動きをどう営業に活かせるかを整理していきます。

1.スマートハウス補助金の注目度が上がる背景

スマートハウス補助金が注目を集めているのは、単に家計の助けになるからではありません。

社会全体で「エネルギーを自給する家づくり」への関心が高まり、国や自治体がその流れを後押しするようになったことが大きな背景にあります。


経済産業省の「分散型エネルギーリソース導入支援事業」※1や、環境省の「地域レジリエンス強化事業」※2などでは、太陽光発電・蓄電池・HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)などの導入が補助対象として設定されています。


これらの制度は、災害時にも電力を確保できる家庭を増やすことを目的としており、“暮らしの安心”と“エネルギー自立”を同時に促進しています。


こうした政策の追い風を受け、一般の住宅検討層の関心も「節約」から「自立」へと変化しています。

補助金はその変化を具体的な行動へ導く“きっかけ”として機能しているのです。

2.情報を“自分で比較検証”するユーザーが増えている

制度の存在をきっかけに関心を持つ人が増える一方で、実際の検討段階では“情報を自ら比較するユーザー”が確実に増えています。


たとえば、「国の制度」と「自治体の制度」を組み合わせて最大限の補助を得ようとするケースや、複数の業者から見積もりを取り、補助条件・性能・施工実績を並べて比較する行動です。

東京都のように太陽光1kWあたり最大10万円、蓄電池最大60万円という高水準の補助がある地域もあれば※3、他の自治体では上限10〜20万円にとどまる場合もあります。


この地域差を事前に把握しているユーザーは、すでに“価格そのもの”ではなく“制度活用力”で業者を見ています。

つまり、営業担当が「補助金があるかどうか」で話を終えるのではなく、「どの条件で、どの制度をどう使えば最も効果的か」を説明できるかが信頼を得る分かれ道です。

こうした動きの先に見えてくるのは、ユーザーが「制度を理解しているか」ではなく、「どのように活かすか」で判断する時代になったということです。


次章では、その意識変化が“費用対効果”の捉え方にどう影響しているかを見ていきます。

3.顧客は“費用対効果”よりも“回収のストーリー”を求めている

補助金を使ってスマートハウス設備を導入する場合、多くは10〜20年単位で投資を回収します。

たとえば、太陽光と蓄電池の組み合わせでは総額250万円の設備に対し、約70万円の補助を受けられるケースが一般的です。

光熱費の削減を含めれば、15年前後で元が取れる試算になります。


しかし、近年のユーザーは単に「何年で回収できるか」だけを基準にしていません。

むしろ、「その期間を通じてどんな安心が得られるか」「どれだけ生活が安定するか」を重視しています。

“数字ではなく実感”で判断する層が確実に増えているのです。


住宅会社に求められるのは、「補助金で安くなる」ではなく、「その選択が生活の質をどう変えるか」を描ける提案。

つまり、費用対効果の提示から、納得体験の設計へと営業の重心を移す必要があります。


こうした顧客心理の変化は、商談の進め方そのものにも影響を及ぼしています。

次章では、実際の営業現場で何が変わり始めているのかを整理します。

4.営業現場の“優先順位”が変わりはじめている

前章のように、顧客の判断基準が「金額」から「納得と実感」に移る中で、営業現場でも提案の順序が変化しています。


以前は「価格 → 性能 → 工期」という流れが主流でしたが、いまは「性能・環境 → 長期コスト → 価格」という順に話すほうが納得を得やすい場面が増えています。

特に都市部では30〜40代を中心に、「環境性能が高い家こそ安心で持続可能」という意識が定着しており、説明順序を間違えるだけで印象が変わることもあります。


一方、価格優先層や地方エリアでは、“数字や補助金の裏付け”を重視する傾向が強いため、数値化された根拠を示す工夫が欠かせません。

いずれにせよ、営業現場での提案順序の最適化が求められているのです。


こうした提案力の違いが、すでに“契約率”の差として現れ始めています。

次の章では、具体的にどのような工夫が成果につながるのかを具体例とともに紹介します。

5.営業現場での実践とトークの工夫

環境配慮型設備の提案は、トークの一工夫で大きく印象が変わります。

たとえば以下のようなアプローチです。

キャラクター

■ 環境配慮建材や省エネ設備を使った施工事例をパンフレットで紹介する


■ 見積書に“従来設備との光熱費比較”を明記する


■ 補助金や減税を踏まえた「実質負担額」を提示する



一見すると小さな工夫に見えますが、こうした積み重ねが「信頼される営業」を生みます。

重要なのは、“補助金を売る”のではなく、“補助金を使って顧客の納得を設計する”という発想です。


そして、補助金をきっかけに生まれたこの意識変化は、長期的な市場構造にも波及しています。

最後に、住宅会社が備えるべき中長期的視点を見ていきます。

6.“補助金後”を見据えた住宅市場の方向性

今後、スマートハウス補助金は年度ごとに見直される可能性があります。※4

しかし、補助制度が縮小しても「自立した暮らしをしたい」というユーザーの意識は後退しません。

すでに「補助がなくても導入したい」という層が生まれ始めています。


その背景には、停電時の安心や電気代の安定、環境配慮への実感といった“暮らしの質”への価値転換があります。

つまり、補助金は「動機づけ」ではあっても、「価値の中心」ではなくなりつつあるのです。


住宅会社に求められるのは、補助金を“販売の武器”ではなく、“信頼を築く導線”として扱う姿勢です。

顧客の行動を理解し、制度の有無にかかわらず“納得して選ばれる理由”を設計することが、これからの営業における差別化になります。


まとめ|「制度を語る営業」から「行動を読み解く営業」へ


スマートハウス補助金をめぐる顧客行動の変化は、住宅業界に新たな示唆を与えています。

今、問われているのは「制度をどれだけ知っているか」ではなく、「顧客がどう使おうとしているかを理解しているか」です。


制度説明ではなく、行動の背景を読み解ける営業――それが、次の時代の提案力です。

補助金を語るのではなく、顧客の行動を設計できる営業こそが、市場の変化をリードしていくでしょう。


キャラ
 



<出典元>

  • ※1:経済産業省(2024)「分散型エネルギーリソース導入支援事業」
  • ※2:環境省(2024)「地域レジリエンス強化事業 概要」
  • ※3:東京都環境局(2024)「住宅用太陽光・蓄電池等 補助金制度 募集要項」
  • ※4:住宅産業新聞(2024)「スマートハウス補助金の地域格差と動向」



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