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大阪・関西万博 大屋根リングが示した現実|象徴より「説明と持続性」が問われる時代へ

コラム

はじめに|なぜ賛否が分かれることになったのか

気づけば閉幕まで1か月を切った大阪・関西万博

様々な話題が開幕前から現在まで世間を賑わせました。


その中でも会場を取り囲む巨大な“大屋根リング”は、世界最大の木造建築物としてギネス記録(TM)に認定されるなど、注目を集めました。

内径 約615m、外径 約675m、幅 約30m、高さ 約20m、全周 約2kmという規模は圧倒的であり、建築面積は約61,000㎡に及びます。

建築物としてのデザイン性やインパクトは十分でしたが、世間からの評価は賛否が分かれました。


ではなぜ、この象徴的な建築が、喝采と批判の両方を呼ぶ結果となったのでしょうか。

本稿では、その背景と構造を整理し、住宅業界にとっての示唆を考えていきます。

1.万博の木造リングに生じたズレ

大屋根リングは、世界最大級の木造建築として圧倒的な存在感を放ちました。


しかしその一方で、閉幕後の保存や移設に関する方針が示されず、建築としての将来像は不透明なままでした。

さらに、200メートルを保存する場合には改修費が最大76億円に上るとの報道もあり、環境配慮の象徴とされた建築物が現実的に持続できるのか疑念が広がりました。


こうして「象徴としての理想」は、「持続的にどう活用されるのか」という現実との乖離によって希薄化し、信頼を損ねる結果となったのです。

批判の本質はデザインそのものに向けられたのではなく、その後を見通す力と説明の欠如にありました。


象徴的な建築物であればこそ、施工から解体・再利用までを含めたライフサイクルを示す説明責任が欠かせません。

それが示されない限り、話題性は一過性にとどまり、社会に根づく価値にはならないのです。


そして、大屋根リングに向けられた違和感は、この説明不足だけにとどまりません。

次章では、その背景にある「木=エコ」という発想自体の揺らぎを見ていきます。

2. “木=エコ”が通用しなくなった時代背景

大屋根リングの事例が示した違和感の根底には、「木=エコ」という発想が成り立たなくなった時代背景もあります。

近年、生活者は「木材を使えばそれだけで環境に良い」という単純な構図を受け入れません。

社会全体が、製材地から輸送距離、施工方法、解体の容易さ、再資源化の仕組みに至るまで、建築のライフサイクル全体を見透かす視線を持ち始めているのです。


この背景には、“情報の透明化”があります。

資材の調達先や施工方法に関する情報は、いまやネット上や公開資料で容易に確認できるようになり、不整合や矛盾はすぐに可視化されてしまいます。

表面的に「環境配慮」と掲げただけでは、持続性を説明する根拠にはならないのです。

良かれと思って掲げた取り組みでも、整合性を欠けば一瞬で不信を招く時代です。


つまり、現代では象徴の美しさよりも、背景と因果が整合しているかどうかが問われるのです。

3.「説明責任の空白」が批判につながる時代に

こうした背景の中で、設計者や事業主体が直面するのは「説明責任の空白」です。

設計思想がどれほど真摯であっても、説明が欠ければ生活者や投資者の納得は得られません。

サステナブルな設計とは、形や素材の美しさで語るものではなく、調達・施工~撤去までの因果を通すものです。


自治体や金融機関、利用者は「説明できる透明性」を重視し、共感は疑問に先回りした語りから生まれます。

説明はもはや付随的な広報ではなく、設計そのものの一部となっています。


そしてこの説明することの重さは、今回のような公共建築に限った話ではありません。

住宅というより身近な領域ではどのように求められるのでしょうか。次章で考えていきます。

4.住宅設計にも問われる、“長く活かす思想”

公共建築での説明不足が批判や不満につながるなら、住宅事業においても同じ課題を避けて通れません。


住宅を建てる際に使用する断熱材や自然素材の導入といった単体の選択は、それだけでは納得性を生みません。

性能・体験・環境を重ね合わせ、統合的に語ることが必要です。


例えば、断熱性能は光熱費削減や健康改善と結びついて初めて顧客の理解を得られます。

素材選びも、施工性や更新性と組み合わせることで長期的な満足度につながります。

こうした整合がなければ、いかにデザイン性を高めても「机上の設計」と見なされてしまいます。

このような住宅設計での思想を考えると、建築業界全体が制度的にも説明責任を求められる時代に移行していることが見えてきます。


“説明をする”という観点によりフォーカスを当てて、次章では考えていきます。

5.建築業界が向き合うべき、“説明の時代”という現実

現場での課題をさらに俯瞰すると、業界全体に共通する大きな流れが見えてきます。

それは今、「説明の時代」が到来しているということです。


なぜこの設計なのか、代替案と比較してどう優れているのか、将来の更新や再利用までどう組み込むのか。

こうした説明が欠ければ、信頼は得られません。


令和7年4月から、省エネ基準の適合がすべての新築・増改築に義務化されます※2。

これはさらに制度レベルでの「説明できる設計」が求められることを意味します。

つまり、万博で突きつけられた“説明の空白”の教訓は、住宅や業界制度にも直結しているのです。


理念やスローガンを用いて熱量をぶつけるのではなく、一つひとつの選択を「なぜそうしたのか」と因果で説明することが競争優位を生みます。


この力を持つ企業は、価格競争に陥らず、LTVや紹介・再販で収益を持続させられます。

つまり、デザインはもちろんのこと、性能・環境・収益を一体として語れる経営こそが、これからの勝ち筋になります。



まとめ|象徴から整合へ。“長く活かす設計”と“語り切る説明”が収益を底上げする

万博の木造リングが投げかけたのは、素材や象徴の是非ではなく「どう長く活かし、どう語り切るか」という問いでした。

デザイン性は社会に開かれる入口として重要ですが、それ単独では経営判断につながる根拠を欠きます。


性能・環境・収益性と結びつけ、説明責任を果たすことで初めて顧客や社会の信頼を得られます。

この姿勢を持つ企業だけが、価格競争を超えて持続的に収益を高められるのです。


象徴を磨くより整合を積み上げること。

これが、企業にとって持続的に価値を生み出す道筋となるのです。


キャラ
 



<出典元>

  • ※1:朝日新聞(2025)「万博の大屋根リング、200メートル保存の改修費『最大76億円』」
  • ※2:国土交通省(2025)「建築物省エネ法 改正概要」


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