2025.10.23 COLUMN

建材メーカーのカーボンニュートラル戦略を顧客提案に組み込む| 環境対応を“営業の強み”に変える方法

はじめに|現場で感じる「環境対応」という新しい会話

お客様から「この素材ってエコなんですか?」「環境に配慮されてますか?」と聞かれたことありませんか?

以前なら「デザイン」や「価格」が主な判断軸だった家づくりの商談に、いまや「環境対応」という視点が加わりつつあります。


その背景にあるのは、“建材メーカーの脱炭素化”です。

メーカー各社がリサイクル材や再生素材を使った新商品を打ち出し始め、建築の世界でも“CO₂を出さない建材選び”が現実的なテーマになっています。

そしてその結果として、現在では「義務化」というところまできています。


つまり環境対応は、顧客提案の中で避けて通れない新たな領域になりつつあるのです。


本稿では、建材メーカーのカーボンニュートラル戦略を踏まえ、営業担当者がどのように環境対応を強みへと変えていけるかを具体的に解説します。

1.建材メーカーに広がる脱炭素シフト

脱炭素化の流れは、もはや一部の先進企業だけの取り組みではありません。

大手建材メーカーでは、再生材を使った断熱パネルや低炭素セメントを相次いで商品化し、原材料の調達から製造・輸送・廃棄までのCO₂排出量(カーボンフットプリント)を開示する流れが加速しています※1。


その背景にあるのは、国際的に広がるESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視した投資)と、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による情報開示の潮流です。


ESG投資では、企業がどれだけ環境負荷を減らし、社会的責任を果たしているかが投資判断の基準になります。

また、TCFDは企業に対して、気候変動が事業に与えるリスクやCO₂排出量を定量的に開示することを求めており、上場企業を中心に対応が急速に進んでいます。


こうした国際基準の広がりによって、建材メーカーも「製品の性能」だけでなく、「製造過程の環境負荷」まで示すことが必須となり、脱炭素対応が経営課題に直結するようになったのです。


この変化は住宅業界にも及び、お客様の選定基準が「価格」や「性能」だけでなく「環境に配慮されているか」へと拡張しています。

ゼロカーボン認証材やリサイクル建材を指定する方も現れ、環境対応はすでに「選ばれる住宅会社」の条件となりつつあります。

2.建材コスト動向と住宅会社への影響

環境対応が「選ばれる理由」になりつつある一方で、新たな課題も生まれています。

その代表的なものが、“コスト上昇”です。


2024年以降、主要建材メーカーが木材・断熱材・屋根材などを一斉に5〜10%値上げしています※2。

原材料価格の高騰はもちろんこと、加えて再生材の加工・輸送コストがかかるためです。


その結果、「環境配慮=コスト増」という構図が生まれています。

価格転嫁が難しい中で利益率が下がるケースも見られ、営業担当者は「環境性能をどう伝えるか」が求められるようになりました。


さらに、施主から「この見積りの中に使われている建材の環境性能を教えてほしい」と問われるケースも増えています。


営業担当者に求められているのは、単に商品説明をするだけでなく、“建材の背景まで説明できる提案力”です。

3.営業が環境対応を差別化要素にする視点

このような「コスト増」の現実を前に、営業担当に必要なのは、環境対応を“費用の問題”ではなく、エンドユーザーの関心が高まっている“価値創出の文脈”で語る力です。


例えば、断熱性能の高い窓やリサイクル建材を導入する場合、単に「価格が上がる」ではなく、「快適性や光熱費削減など、日常に返ってくる効果」を具体的に示すことで、顧客の納得度が高まります。

“環境性能=コスト”ではなく、“環境性能=生活の質を高める投資”として話すことが、営業現場の差別化ポイントになります。


また、国や自治体による補助制度やZEH関連支援を組み合わせることで、顧客の負担感を下げることも可能です。

営業資料の中で「環境対応建材の採用 × 補助金活用 × ランニングコスト削減」を一体で提示すれば、価格だけで比較されにくくなります。


省エネ住宅の基準や補助制度の具体的な仕組みについては、

前回のコラム『2025年省エネ基準義務化って何?光熱費や住宅性能、快適さはどう変わるか』でも詳しく解説していますので、ご覧ください。


👉 https://freedom-x.co.jp/news/news-19433



また、こうした“環境対応を価値として伝える”動きは、単なるトークの工夫にとどまりません。

営業現場そのものの優先順位や提案プロセスにも変化をもたらしています。

次章では、こうした意識の変化がどのように商談の進め方に影響しているのかを見ていきます。

4.環境対応が営業現場の優先順位を変える

前述のとおり、「環境性能をどう伝えるか」という営業の意識変化は、現場の提案プロセスそのものにも影響を与えています。

これまで“価格をどう下げるか”が商談の中心だったのに対し、いまは“将来コストをどう抑えるか” “環境への配慮をどう示すか”といった説明の順序や焦点が変わりつつあります。


以前は「価格→仕様→工期」の流れで説明していた商談を、「性能・環境→長期コスト→価格」という順に変えるだけで、顧客の納得感が大きく変わるケースがあります。


また、都市部では30〜40代を中心に「環境性能が高い=良い住宅」という意識が定着しつつあり、営業担当者がその期待に応えられるかが選定基準になる場面も増えています。

一方、地方や価格重視層では“数字や補助金での裏付け”が有効です。


このように、環境対応の波は「営業現場の優先順位そのものを変えている」のです。

営業担当者に求められているのは、“説明上手”ではなく、“設計上手”――提案の流れを組み替え、環境対応を“売りやすくする仕組み”に変える視点です。

5.営業現場での実践とトークの工夫

では、具体的にどのように営業トークへ組み込めばいいのでしょうか。

その例をいくつか提示いたします。

キャラクター

■ 環境配慮建材を使った施工事例をパンフレットに掲載する


■ 見積もりで従来建材と環境配慮建材の光熱費差を比較する


■ 補助金や減税を踏まえた「実質負担額」で話す



一見すると小さな変化になるかもしれませんが、こうした小さな工夫の積み重ねが、顧客の納得感を生み出します。

重要なのは、“環境対応”を話題ではなく“武器”にする意識です。

営業担当者がそれを使いこなせるようになることが、次の商談成果を左右する分岐点になります。

6.中長期的展望と備え

今後、環境対応建材の標準化はさらに進みます。


大手デベロッパーでは、すでに新築住宅の標準仕様に低炭素建材を採用しており、公共建築では使用が義務化されつつあります※3。


こうした中で、“環境未対応企業”は入札や商談の段階で選定から外れるリスクも高まります。

一方、早い段階から環境対応を営業提案に取り込める企業は、“環境を扱える営業組織”として市場で信頼を得られるでしょう。


まとめ|“語る環境対応”から“扱う営業力”へ


環境配慮はもはや“特別な売り文句”ではありません。


営業担当者に求められているのは、環境の話をすることではなく、「環境を前提にどう提案を設計するか」という発想の転換です。

顧客が求めているのは、環境配慮そのものよりも、“自分の選択がどんな未来につながるか”という実感です。


建材や制度を通してその未来を描ける営業こそ、これからの時代に選ばれる“未来設計型の営業”と言えるでしょう。


キャラ
 



<出典元>

  • ※1:ハウジングニュース(2024)「主要建材メーカーにおけるCO₂削減・再生材導入の動向」
  • ※2:住宅産業新聞(2024)「主要メーカーの価格改定一覧」
  • ※3:METAEXPO(2024)「低炭素建材と自治体入札要件の最新動向」


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