お知らせ

大手ハウスメーカーが打ち出す“GX志向型住宅シフト”に、中小工務店はどう対応すべきか

コラム

はじめに|GX住宅シフトが迫る業界構造の変化

住宅業界ではいま、「GX(グリーン・トランスフォーメーション)志向型住宅」が急速に広がりつつあります。

GX(グリーン・トランスフォーメーション)とは…
化石燃料中心の経済社会システムを脱炭素化し、再生可能エネルギー中心の持続可能なものへと経済社会全体を構造的に変革していく取り組み。


国土交通省は2025年から省エネ基準の適合を全ての新築住宅に義務付け、断熱等級6以上など高性能化が標準になることを打ち出しました※1。

これに呼応するように、大手ハウスメーカーはGX志向型のモデルを積極的に展開しています。

こうした動きは、単なる新商品開発ではなく、制度と市場を背景にした業界全体の構造転換です。


本稿では、このGX志向型住宅シフトを整理し、その中で中小工務店が直面する課題と対応の方向性を考えていきます。

1.GX志向型住宅制度と大手ハウスメーカーの動き

“GX志向型住宅”とは、ZEH基準の水準を大きく上回る省エネ性能を有する脱炭素志向型の住宅のことを指します。


大手各社はすでに制度を見据え、先行投資を進めていました。

例えば、積水ハウスはZEH率90%超のモデルを展開し※2、旭化成ホームズも高性能断熱材とIoT連携によるGX対応住宅を強化しています※3。

これらは、「性能の高さ」そのものを訴求する戦略です。


制度と市場の両面から推進される高性能化シフトは、もはや一過性のトレンドではなく業界の前提条件になっています。

2.中小工務店に生じる構造的課題

一方、この流れを受けた中小工務店が直面するのは次のような構造的課題です。


第一に、建築コストの上昇です。

高性能断熱材や最新設備を導入すれば、今までより1棟あたり80〜100万円程度の負担増となる可能性があります※4。

小規模事業者ほど価格転嫁が難しく、経営に与える影響は大きいでしょう。


第二に、制度対応のノウハウ不足です。

BELS評価や省エネ適合証明の取得など、申請手続きは複雑で、大手は専門部署を持つ一方、中小では営業担当が兼務するケースが多く見られます。

さらに、業務管理の仕組みづくりが遅れている中小では、ITやDXの活用も十分に進んでいません。

結果として、申請や情報共有の負担が重くのしかかり、現場に余計な時間的・精神的コストを強いているのです。


第三に、情報発信力の差です。

大手はテレビCMや全国規模のキャンペーンで訴求するのに対し、中小は地域密着の限られた広報活動に留まりがちです。

消費者のGX認知が大手中心に形成されると、競争環境はさらに厳しくなります。


つまり中小にとってGX対応は、単に技術導入ではなく、体制や仕組み、発信力といった経営基盤にまで及ぶ挑戦になるのです。

3.経営として、この時代に行うべき差別化の3本柱

前章で触れた課題を踏まえ、中小工務店がとるべき道は「大手と同じ土俵に立ち、戦うこと」ではありません。

むしろ、経営の意思決定として、自社の強みを生かした差別化が不可欠です。

ここでは経営という観点から、行うべき3本の柱を提案します。

① 「性能値」ではなく「暮らし体験」を前面に出す


断熱等級や数値だけではなく、「冬の光熱費シミュレーション」や「体感イベント」を開催し、実際の暮らしで得られる効果や快適性を提案価値とする。

さらに、シミュレーションツールやデータ可視化の仕組みを導入することで、より分かりやすく、一貫性のある提案を行うこともできます。


② 地域特性・柔軟対応を武器にする


寒冷地に特化した断熱仕様や、湿度対策を重視した換気システムなど、地域特性に即した柔軟な提案は、大手では真似しにくい領域です。

また、地域ごとの気候データや施工実績をDXで蓄積・分析すれば、属人的な経験に依存せず、組織的に強みを発揮できます。


③ 補助金申請サポートを“安心材料”に変える


自治体ZEH補助金や省エネ支援制度の申請を代行することは、顧客にとって大きな安心感につながります。


このように、組織として「地域密着性」「暮らし提案」「制度活用支援」という3点で差別化を図ることが、今後の生存戦略となります。

4.営業現場で実践できる3つの具体策

前章では企業、経営としての対応策を考えました。

一方で営業担当としてはどのようなことができるのでしょうか。

この章では、営業現場で実行可能な具体策を3つ挙げます。

① GX制度資料を営業トークに組み込む


国交省が公表しているパンフレットや制度概要資料を活用し、公的根拠に基づく説明を行うことで説得力が増します。

ここでは、デジタル資料をタブレットや営業支援システムに組み込み、常に最新情報を提示できる体制を整えることが重要になります。


② 見積もり段階で性能と費用を比較提示する


「断熱等級4」と「等級6」を並べ、月々の光熱費の差を可視化することは、顧客にとって理解しやすく、納得感を高めます。


③ GX施工事例を発信して信頼を醸成する


完成見学会で実際の光熱費データを提示するなど、実績を“数字と体験”で示すことで、言葉以上の信頼を得られます。

この顧客事例については、データベース化することによって“属人的ではない営業力”を構築できます。

営業は抽象的な理念ではなく、ツールなどを活用しながら、具体的な数値と事例で伝えることが重要です。

5.次の市場変化を見据える視点

ここまで述べてきた現在におけるGX対応だけでなく、その先の変化にも備える必要が企業には求められます。


なぜなら、2027年にはHEMSや蓄電池の導入要件が新たに追加される見込みであり、動きはさらに加速します※5。


高性能住宅は資産価値にも影響を与え、不動産査定に「省エネ性能表示」が導入されることで、住宅は単なる「消費財」ではなく「投資対象」として扱われるようになります。


さらに、「地域資源としての住宅」という発想も重要です。

地域材を活用し、GX住宅と結びつけることで、環境性と地域経済を同時に支える取り組みが広がりつつあります。


こうした次の変化を見据えると、GXシフトは「制度対応の一時的課題」ではなく、住宅業界全体の進化プロセスであることが見えてきます。

まとめ|現場と経営の両輪で臨むGXシフト

GX志向型住宅の広がりは、大手主導の流れでありながら、中小工務店にも新しい挑戦と可能性を突きつけています。

数値や制度対応で正面から競うのではなく、暮らしの体験・地域特性・制度サポートを組み合わせた差別化が不可欠です。


経営の視点で見れば、これは営業現場の工夫だけでは埋めにくい課題です。

申請や制度対応、顧客提案の精度を高めるためには、組織的な体制整備や経営判断が必要になります。

さらに、ここにDXやITを活用した仕組み化を取り入れることで、情報の複雑化や業務負担を最小化し、現場が提案に集中できる環境が整います。


現場と経営の両輪がかみ合い、そこにデジタルの力を組み合わせること。


この三位一体の取り組みこそが、GXシフトの時代に中小工務店が持続的に顧客から選ばれる立場を築く鍵となるのです。

 



<出典元>

  • ※1:国土交通省(2025)「建築物省エネ法 改正概要」
  • ※2:積水ハウス株式会社(2024)「サステナビリティレポート」
  • ※3:旭化成ホームズ株式会社(2024)「GX対応住宅モデル発表資料」
  • ※4:一般社団法人住宅生産団体連合会(2024)「省エネ住宅に関するコスト試算」
  • ※5:経済産業省(2025)「住宅DXロードマップ」


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私たちFREEDOM X株式会社は、「教育よりも早く、採用より確実に。知的生産性に、革命を。」 を経営理念に掲げ、建築・不動産領域の知的生産性向上に挑んでいます。

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