2025年省エネ基準義務化って何?光熱費や住宅性能、快適さはどう変わるか
目次
はじめに|住宅購入に関わる大きな制度変更
2025年4月から、新築住宅に関わる省エネ基準が大きく変わりました。
これまで「説明義務」として一部の建築物で求められていた対応が、今後は“すべての新築住宅で省エネ基準に適合することが必須”となったのです※1。
住宅購入を検討する方にとって、この制度変更は「建物の性能や価格」「光熱費」「暮らしの快適さ」に直結するテーマです。
本稿では、省エネ基準の内容と、購入を検討する際にどのような点に注意すべきかを整理していきます。
1.省エネ基準義務化の内容
この制度が実際にどういうものか、まずは改正内容を見ていきましょう。
今回の改正では、新築のすべての建築物に省エネ基準への適合が求められます※2。
対象は戸建てやマンションのような住宅だけでなく、学校や事務所といった非住宅も含まれます。
また、増改築については部分的に基準が適用される仕組みです。
従来は「施主に対して省エネ性能を説明する義務」が中心でしたが、今後は説明にとどまらず、「基準を満たさなければ建てられない」という形に変わったのです。
2.基準の技術的な中身
では、具体的にどのような数値や性能で判断されるのかを整理します。
基準を満たすかどうかは、主に「断熱性能」と「一次エネルギー消費性能」で判断されます。
断熱性能は「UA値」という数値で表され、地域ごとに基準値が設定されています。
たとえば東京などの6地区では、UA値0.87以下が求められます。
これは「家の中の暖かさや涼しさが、どのくらい外に逃げにくいか」を示す指標で、値が小さいほど性能が高いことを意味します。
イメージとしては、UA値0.87は従来の一般的な住宅よりもワンランク上の断熱性能を確保する水準です。
一方、エネルギー消費は「BEI値」で評価され、建物全体で1以下であれば適合とされます。
これは断熱だけでなく「冷暖房や給湯設備の効率」も含めた総合評価で、BEI=1.0なら“基準通り”、0.8なら“基準より20%省エネ”ということです。
こうした数値は一見難しく感じますが、要は「断熱材や窓などの仕様」と「冷暖房や給湯の効率性」を総合的に見て、省エネかどうかを確認する仕組みだと考えると分かりやすいでしょう。
3.基準を満たすためのコストと回収の考え方
基準が分かったところで、気になるのは“いくらかかるのか”という点です。
これらの省エネ基準に適合させるには、従来の費用 + 追加コストが発生します。
国土交通省の試算では、延床120㎡の戸建て住宅で“約87万円”の追加費用がかかるとされています※3。
ただし、このコストは光熱費削減で少しずつ回収できます。
同じ試算によれば、地域や設備仕様によって差はあるものの、「おおむね17〜35年で回収可能」とされています。
この「回収期間」がポイントで、
・長く住み続ける予定なら、光熱費削減の恩恵を受けやすい
・近い将来に売却を考えるなら、省エネ性能が資産価値を下支えする要素になる
といったように、ライフプラン次第で捉え方が変わります。
4.快適性や暮らしへの影響
追加コストの有無だけでなく、「日々の快適さ」が変わるのも省エネ基準の特徴です。
断熱や気密が高まることで冬は暖房効率が上がり、夏は冷房負荷が下がります。
外気温の影響を受けにくいので、室内の温度が安定しやすくなるのです。
さらに、義務化によって住宅性能の底上げが進むため、「これから建つ家はある程度の快適性が担保される」ということになります。
ただし、基準はあくまで「最低ライン」です。
UA値や断熱等級を比較すると、同じ基準適合住宅でも体感温度や光熱費削減効果に差が出るため、仕様比較は引き続き重要です。
5.検討者が確認しておきたいこと
では、これから家を建てる・購入する方は、どのように確認を進めればよいのでしょうか。
・工務店や住宅会社に、省エネ基準適合住宅かどうかを確認すること
→ 断熱材の厚みや、窓が樹脂サッシ・Low-E複層ガラスかどうかなど
・見積もりの中で、省エネ性能に関わる設備や仕様がどう反映されているかを確認すること
→ 標準仕様と高性能仕様で差額がどう出るかを見極める
・補助金や税制優遇を調べて、利用できるものを把握しておくこと
→ 子育てエコホーム支援事業や住宅ローン減税など※4
この3点を押さえるだけでも、検討の進めやすさはぐっと変わります。
まとめ|「義務化」で性能が底上げされる時代へ
2025年の省エネ基準義務化は、住宅を検討する人にとって「建物選びの前提条件」が変わる出来事です。
一定以上の性能が必ず確保される一方で、仕様の違いによる快適性やコスト効果は引き続き注目すべきポイントになります。
住宅を長く安心して使うために、基準を満たしているかを確認するだけでなく、追加コストと光熱費削減のバランス、自分のライフプランとの相性を考えることが大切です。
そして、補助金や税制優遇も活用しながら、納得感のある選択をしていただければと思います。
<出典元>
- ※1:国土交通省(2025)「建築物省エネ法 改正概要」
- ※2:国土交通省(2025)「省エネ基準義務化に関する解説」
- ※3:国土交通省(2024)「戸建住宅における追加コスト試算」
- ※4:経済産業省(2024)「住宅省エネ支援制度の概要」
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